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【医薬品】CMOとは?CDMOとの違いや製造委託のメリット・選定ポイントを解説

【医薬品】CMOとは?CDMOとの違いや製造委託のメリット・選定ポイントを解説

「自社工場を持たずに創薬へ集中する」

医薬品業界において、製造のアウトソーシングはもはや経営のスタンダードとなりました。

しかし、コスト削減などのメリットの裏には、委託先管理や法的な責任といった重大なリスクも潜んでいます。

本記事では、混同しやすいCMO・CDMO・CROの違いを整理したうえで、失敗しないベンダー選定や委託側の責任まで詳しく解説します。

目次

医薬品業界におけるCMOとは

医薬品業界におけるCMOとは

CMO(Contract Manufacturing Organization)は日本語で医薬品製造受託機関と呼ばれ、製薬企業の依頼を受けて医薬品製造を代行する企業を指します。

かつては開発・製造の委託範囲に制限がありましたが、2002年に公布され2005年4月に全面施行された改正薬事法により、品目ごとの製造業許可が廃止され、新たに製造販売業の許可制度が設けられました。これにより、自社で製造所を持たずに製造を全面的に外部委託することが可能となり、受託市場は拡大が続いています。

数字で見ても、拡大の傾向は明らかです。富士経済の調査によると、国内のCMO/CDMOビジネス市場は2035年に2025年比77.1%増の1兆720億円、CROを含めたCMO/CDMO/CROビジネス市場全体では同64.7%増に達するという予測です。製造設備を保有しない製薬ベンチャーの増加や、補助金などの政策支援も市場拡大を後押ししているとされます。(出典:富士経済グループ「CMO/CDMO/CROビジネス、医薬品プラント/システム市場を調査」)

国内CMO/CDMO/CROビジネス市場の推移

近年、バイオ医薬品などの製造設備の高度化に伴い、製薬会社が自社工場を持たずに製造プロセスを外部へアウトソーシングする動きが加速しています。

CMOを活用すれば、製薬企業は莫大な設備投資を抑え、コア業務である創薬研究や販売戦略に経営資源を集中させることが可能です。

CMO・CDMO・CROの違いを比較

CMO・CDMO・CROの違いを比較

医薬品業界のアウトソーシング先として、CMOと頻繁に比較されるのがCDMOとCROです。

よく似た名称ですが、いずれも製薬企業からの業務委託を受けるパートナー企業です。

ここでは、それぞれの定義とCMOとの違いについて解説します。

CDMOとの違い

CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)は、医薬品開発製造受託機関と呼称されます。

以下のように並べると分かりやすいですが、その名のとおり「開発」の機能も併せ持っているのが、CMOとの違いです。

  • CMO:医薬品「製造」受託機関
  • CDMO:医薬品「開発製造」受託機関

CMOが依頼主から完成された技術を受け取って製造のみを行うのに対し、CDMOは製法開発の段階から参画し、治験薬の製造までを一貫して請け負います。

近年は新薬開発の難易度が上がっているため、単なる製造代行ではなく、プロセス開発の段階から技術的な提案ができるCDMOをパートナーに選ぶ企業が増えています。

CROとの違い

CRO(Contract Research Organization)は医薬品開発業務受託機関と呼ばれ、主に製薬メーカーが行う治験や臨床試験の運営を代行・支援する企業です。

CMOが実際のモノ(医薬品)を製造する工場としての機能を持つのに対し、CROは有効性や安全性を確かめるための試験データに関わる業務(モニタリング、データマネジメント、統計解析など)が中心となります。

CROとCMOは、いずれも製薬企業が医薬品を開発・製造するうえで専門的な能力を提供するパートナーです。

CMOは製造のステージで、CROは臨床開発(治験)のステージでそれぞれ重要な役割を担っており、活躍の場が異なっています。

CROと、医療機関の側で治験を支えるSMOとの違いは、「CROとSMOの違いとは?治験成功を左右するパートナー選びを解説」で整理しています。

医薬品製造をCMO/CDMOに委託するメリット

医薬品製造をCMO/CDMOに委託するメリット

自社で工場を保有せず、CMOやCDMOへ製造を委託するとき、主に以下のようなメリットが考えられます。

  • 設備投資・固定費の削減
  • 専門技術の活用と開発スピードの向上
  • コア業務へのリソース集中

経営の効率化や競争力の強化に直結する、これら3つについて解説します。

設備投資・固定費の削減

医薬品を製造するための工場を自社で建設・維持するとなれば、莫大なコストがかかります。

GMP(正式名称は「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」。平成16年厚生労働省令第179号)に適合した設備を導入するには、製造棟ひとつを建てるだけでも、100億円を超える規模の投資となります。

公表されている事例を見ると、協和キリンが高崎工場に建設したバイオ医薬品原薬製造棟(HB7棟)は投資額100億円超、中外製薬が藤枝工場に建設した合成原薬製造棟(FJ3)は総投資額555億円とされています。モダリティや生産規模によって幅はあるものの、自社で製造機能を持つということは、この水準の初期投資と、その後の維持管理を引き受けるということです。(出典:協和キリン「協和キリン高崎工場 新バイオ医薬原薬製造棟を建設」2022年5月17日、中外製薬 ニュースリリース 2021年7月26日)

また、稼働後も維持管理費や人件費といった固定費が経営を圧迫しかねません。

CMOやCDMOを活用すれば、これらの初期投資や固定費を変動費に変えることができます。

必要なときに必要な分だけ製造を依頼することで、市場の需要変動にも柔軟に対応でき、財務体質の改善にも大きく寄与します。

専門技術の活用と開発スピードの向上

医薬品開発の世界では、治療の手段や方法を指す「モダリティ」の多様化が進んでいます。

従来の化学合成による低分子医薬品に加え、バイオテクノロジーを駆使した抗体医薬や、さらには遺伝子・細胞を用いる再生医療等製品といった、新しいタイプの医薬品(ニューモダリティ)が次々と登場しています 。

これらすべての製造ラインや最新技術を自社だけで整備し、専門人材を育成し続けることは、時間的にもコスト的にも現実的ではありません。

新薬開発は時間との勝負です。

特定の分野に強みを持つCDMOに委託すれば、すでに確立された最先端の技術やノウハウを即座に利用できます。

一から技術開発を行う時間を省略できるため、開発期間を大幅に短縮し、競合他社よりも早く新薬を市場へ投入できる可能性が高まります。

コア業務へのリソース集中

製薬企業の本質的な役割は、画期的な新薬を生み出す研究開発力と、その薬の価値を正しく医療現場に伝え、患者に届ける販売・マーケティング力にあります。

製造業務を信頼できるパートナーへアウトソーシングすることで、こうした限られた社内の人材や予算を、コア業務へ集中させることが可能となるのです。

製造部門を持たないファブレス経営への転換は、組織のスリム化を実現します。

得意分野に特化することで企業としての付加価値を高め、グローバル競争の中で生き残るための経営基盤を築くことにつながります。

委託前に知っておくべきデメリットとリスク

委託前に知っておくべきデメリットとリスク

安易なアウトソーシングは、将来的な技術力の低下や、予期せぬトラブル対応の遅れを招くリスクがあります。

  • 製造ノウハウの社内蓄積が難しい
  • コミュニケーションと進捗管理の難易度
  • 品質トラブル時の対応

このような中長期的な視点で事業に与える影響や、万が一のトラブル時に生じる課題についても理解しておく必要があります。

製造ノウハウの社内蓄積が難しい

製造業務を外部のパートナーに委託するファブレス経営や製造委託では、委託元は実際の製造工程に直接関与しません。

そのため、製品を効率よく、高品質に作り上げるための製造技術や日々の改善から得られる知見が社内に蓄積されにくいという問題があります。

もちろん手順書などの文書は共有されますが、現場レベルの細かなコツやトラブルシューティングの経験といった暗黙知は、実際に手を動かしている受託側にしか残りません。

こうして技術的な主導権を失うことは、コスト管理の主導権を失うことにつながり、企業の収益性を圧迫するリスク要因となります。

コミュニケーションと進捗管理の難易度

自社工場であれば、何か問題があればすぐに現場へ行って確認できますが、外部委託の場合はそうはいきません。

物理的な距離や組織の壁があるため、実際の製造状況や進捗をリアルタイムで把握することが難しくなります。

特に海外のCMOを利用する場合は、言語や時差、ビジネス習慣の違いが壁となります。

「指示したはずの仕様と違う」「報告が遅れて納期に間に合わない」といったトラブルを防ぐためには、綿密な会議の設定など、国内工場以上のコミュニケーションコストをかける覚悟が必要です。

品質トラブル時の対応

もっとも注意が必要なのが、異物混入や品質逸脱といったトラブルが発生した際の対応です。

弊社が支援する中でも、製造現場が他社であるために、原因究明に必要なデータの開示が遅れたり、責任の所在が曖昧になったりする場面が見受けられます。

しかし、薬機法において、市場に出る製品の最終的な品質責任(GQP)を負うのは、委託した製薬企業(製造販売業者)です。

委託先がミスをしたからという言い訳は通用しません。

トラブル時に迅速かつ誠実な対応をしてもらえるよう、契約段階での取り決めや、日頃からの監査体制が不十分だと、企業の信頼を揺るがす重大なリスクに直結します。

失敗しないCMO/CDMOの選び方

失敗しないCMO/CDMOの選び方

医薬品の品質は、パートナーとなるCMO/CDMOの実力に影響を受けます。

自社のプロジェクトを成功に導くための信頼できる相手かどうかを、見極める必要があります。

自社の開発品目との技術的適合性

従来の化学合成で作る低分子医薬品、細胞の働きを利用して作る抗体医薬品(バイオ医薬品)、そして細胞そのものを製品とする再生医療等製品など、その製造プロセスや求められる品質管理は根本的に異なります。

したがって、製造委託先を選定する際には、自社が開発している医薬品と同じモダリティでの豊富な製造実績があるかを確認することが、前提条件となります。

また、開発段階に応じたスケール(規模)への対応力も重要です。

治験用の少量生産から、将来的な商用レベルの大量生産までスムーズに移行できる設備能力があるかどうかも、長期的なパートナーシップを築くうえでの判断材料となります。

GMP体制と査察対応の実績

医薬品を市場に出すためには、製造・品質管理基準であるGMPへの適合が必須となります。

そのCMOが過去に規制当局のGMP調査をパスした実績があるかを確認しましょう。国内の製造所については品目に応じてPMDAまたは都道府県が調査を行い、海外展開を見据えるのであれば、FDAやEMAなど各国当局の査察歴も判断材料になります。

特に海外展開を視野に入れている場合にカギとなるのが、各国の異なる規制要件に対応できる品質保証体制です。

過去に重大な指摘事項を受けていないか、品質トラブルの履歴などを含めて慎重に調査する必要があります。

合わせて確認しておきたいのが、2021年8月1日に施行された改正GMP省令への対応状況です。この改正で新たに法制化されたのは、主に次の項目です。

  • 医薬品品質システムの構築
  • 品質リスクマネジメント
  • CAPA(是正措置および予防措置)
  • データインテグリティの確保

委託先がこれらをどう運用しているかは、適合性調査の結果だけでは見えにくい部分であり、監査の重点項目になります。

コミュニケーションの円滑さ

技術や設備が優れていても、担当者との意思疎通がスムーズでなければプロジェクトは停滞します。

問い合わせへのレスポンスの早さや、技術的な課題に対して提案型のコミュニケーションが取れるかどうかも、重要な選定基準です。

特にトラブル発生時や仕様変更の際に、隠し立てせず誠実に情報を共有してくれる企業風土があるかは見落とされがちです。

契約前の面談や工場見学の機会を活用し、担当者の対応力や現場の雰囲気を肌で感じて判断することが大切です。

委託する場合に製造販売業者(委託側)が負う責任

委託する場合に製造販売業者(委託側)が負う責任

製造を外部へ委託したとしても、市場に出る医薬品の品質に対する最終責任は、委託元の製薬企業が負わなければなりません。

法律上、委託先にすべてを丸投げすることは認められておらず、厳しい管理監督が義務付けられています。

GQP省令に基づく管理監督義務

GQP省令(「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令」平成16年厚生労働省令第136号)は、製造販売業者に対し、製造業者等を適切に管理・監督することを求めています。なお薬機法上、CMOは「受託者」ではなく製造業の許可を受けた「製造業者」であり、GQP省令でも「製造業者等」という位置づけです。

同省令第7条は、製造業者等との間で、製造方法や品質管理の方法、変更時の連絡体制、逸脱や品質情報が発生した際の対応などを取り決め、文書として締結することを求めています。単に製造を依頼するだけでは足りない、ということです。

さらに同省令第10条第1項では、製造業者等における製造管理および品質管理が取決めに基づいて適正かつ円滑に実施されていることを定期的に確認し、その記録を作成することが求められています。条文上は実地の確認に限定されていませんが、相次いだ医薬品の品質問題事案を受けて発出された2022年(令和4年)4月28日付けの通知では、実地の確認を行うことと、必要な場合に実地確認を可能とする内容を取決めに盛り込むことが求められています。書面のやりとりだけで済ませる運用は、現在の行政の期待水準とは合いません。

もしCMO側で不正やミスがあったとしても、十分な監督を行っていなければ、委託側である製薬企業が管理不十分として行政処分や回収責任を問われることになります。

加えて、2025年(令和7年)5月に公布された改正薬機法では、相次いだ製造・品質管理をめぐる不正事案を踏まえ、医薬品等の品質および安全性の確保の強化が柱のひとつに据えられました。委託先の管理は、今後さらに問われる領域になります。

なお、市場へ出荷したあとの保管・輸送の品質管理については、「【医薬品GDP】ガイドライン準拠への対応手順」で整理しています。

海外CMOを使う場合の注意点

コスト削減などを目的に海外のCMOを利用する場合でも、日本国内と同等の品質管理(GQP)が求められます。

しかし、海外の工場は日本の薬機法を熟知しているわけではないため、日本の規制要件を満たすようコントロールしなければなりません。

さらに、海外の工場を使用するには外国製造業者認定の取得など、国内とは異なる手続きが必要です。認定には5年ごとの更新が必要で、申請から取得までに数か月を要します。なお、製造工程のうち保管のみを行う製造所については、2021年8月に施行された改正により、登録を受けたときは認定が不要です。

実際、弊社が支援する中でも、自社に海外薬事に精通したスタッフがいない状態で委託を進めてしまい、「契約後に品質トラブルが多発したが、どう対処すればいいか分からない」と行き詰まっているケースが見受けられます。

まとめ

CMO/CDMOの活用は事業成長に有効ですが、委託先の選定やGQPに基づく管理体制の構築には、専門知識と経験が不可欠です。

「海外ベンダーの管理に不安がある」「社内にCMC薬事・品質の担当者が不足している」という方は、ぜひキューズコンサルティングへご相談ください。

貴社の課題に合わせ、CMC薬事・品質の専門家がトータルサポートいたします。