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治験におけるGCPとは?主なルールや実務で直面する壁を分かりやすく解説

治験におけるGCPとは?主なルールや実務で直面する壁を分かりやすく解説

「治験におけるGCPとは具体的に何をすればいい?」

「違反リスクを防ぐには?」

医薬品開発の現場で避けて通れないGCP(治験の実施基準)。

本記事では、GCPの定義や目的といった基本から、PMDA対応を見据えた体制構築のヒントまでを解説します。

自社リソースだけでの対応に不安がある場合は、専門家の知見を借りられる薬事コンサルティングの活用も視野に入れながら読み進めてみてください。

目次

治験におけるGCPとは

治験におけるGCPとは

GCP(Good Clinical Practice)とは、新薬の治験において製薬会社や病院に義務付けられた実施基準です。

正式名称は「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第28号)といい、GCP省令とも呼称されています。なお、この省令が対象とするのは医薬品の治験であり、医療機器や再生医療等製品については、それぞれ別のGCP省令が定められています。

なぜこの基準があるかというと、参加する人の人権と安全を守ること、そして信頼できる科学データを集めることが絶対条件だからです。

国への届出や第三者機関による審査など、定められた厳格なプロセスを守らなければ、そのデータは薬の承認審査で認められません。

GCPは、治験を適正に行うための土台となるルールなのです。

参考:厚生労働省「2.治験のルール「GCP」」

GCPの目的と意義

GCPの目的と意義

GCPの目的は、参加者(被験者)の人権・安全を守ることと、信頼できるデータの収集にあることを説明しました。

加えて、世界中で同じ品質の薬を開発できるよう国際的な基準の統一も重要な役割を果たしています。

ここでは、これらについてより詳しく解説します。

被験者の保護

GCPにおいて優先順位が高いのが、治験に参加される方々の人権と安全を守ることです。科学的な成果や社会的な利益よりも、個人の福祉や権利が優先されます。

参加者に対しては治験の内容やリスクを十分に説明し、文書による同意を得るインフォームド・コンセントを義務付けています。

また、治験の計画が倫理的かどうかは、利害関係のない第三者が審査する決まりです。

弱い立場にある患者が不利益を被らないよう、多重のチェック体制で守られているのです。

データの信頼性確保

GCPのもうひとつの目的が、治験データの科学的な質と信頼性の確保です。

例えば、以下のような治験に関するさまざまな記録の作成と保存が義務付けられています。

  • 治験薬の管理に関する記録
  • 症例報告書
  • 検査データ

もし、このような記録に誤りや改ざんがあれば、正しい審査ができず、将来その薬を使う多くの人の健康を損なう恐れがあります。

そのため、いつ・誰が・どのような検査を行ったか、すべての記録を正確に残すことが求められるのです。

また、治験の品質を保証するため、GCPは治験依頼者にモニタリングと監査というチェック機能を義務付けています。

モニタリングは治験が適切に進行しているかを継続的に確認する活動であり、監査は独立した部門が客観的に治験の品質を評価する活動です。

これらは、治験が手順どおりに正確に行われていることを保証する仕組みとして機能します。

国際的な統一基準

現在のGCP省令(J-GCP)は、日米欧が合意した国際基準であるICH-GCP(ICH E6)に準拠して整備されています。ただし両者は完全に同一ではなく、実施医療機関の長の役割など、日本独自の規定も残されています。

かつては国ごとに基準が異なり、海外のデータを日本で使うことが難しいケースもありました。

しかし、ICH-GCPによって基準が国際的に統一されたことで、複数の国や地域が同じルールに基づいて治験を実施する国際共同治験が円滑に行えるようになりました 。

これにより、海外で開発された有効な新薬を、大きな時間のロスなく日本の患者さんへ届けやすくなります。近年は、海外で承認された薬が日本で使えるようになるまでの時間差「ドラッグ・ラグ」に加え、そもそも日本で開発が行われない「ドラッグ・ロス」も課題として指摘されており、国際的な基準との整合はいっそう重要になっています。

なお、そのICH-GCPは2025年1月にE6(R3)がStep 4(合意)に到達し、各極が自国の制度へ取り込む段階に入りました。国内でも、厚生科学審議会臨床研究部会の2025年版とりまとめにおいて、E6(R3)をGCP省令へ適時適切に反映する方針が示されています。試験の目的に応じて管理の程度を変える考え方(プロポーショナリティ)の導入などが論点となっており、SOPや手順書の見直しを見据えておく必要があります。

GCPの主なルール

GCPの主なルール

GCPのルールは多岐にわたりますが、準備、患者への対応、実施中の管理という3つのフェーズに分けられます。

治験開始前の準備

治験準備に含まれるのは、以下の2つです。

  • 治験の計画と届け出
  • 治験審査委員会の設置

この過程を経て治験を実施できる状態になります。詳しく見ていきましょう。

治験の計画と届け出

治験を行うには、まず治験実施計画書を作成しなければなりません。

ここには、誰を対象に、何を、どのように使い、何を評価するのかといった、科学的・倫理的な妥当性を判断するための詳細な情報がすべて記載されます。

治験を開始する前には、治験実施計画書の内容を反映した治験計画届書を、厚生労働大臣あてに届け出る義務があります(薬機法第80条の2第2項)。実際の提出先はPMDAです。

ここで注意したいのは、これが「届出」であって「許可」ではないことです。PMDAは、必要な書類が形式的に揃っていれば受け付けることとなり、許可等を与えているものではないとしています。ただし、新有効成分を含む薬物をはじめてヒトに投与する場合などは30日調査の対象となり、届け出た日から30日を経過した後でなければ、治験を医療機関に依頼することはできません。この期間にPMDAが保健衛生上の危害の発生を防止するための調査を行い、必要があれば治験の中止や変更が指示されます。

治験審査委員会の設置

治験の実施前には、必ず治験審査委員会による審査を受けなければなりません。

治験審査委員会は、実施医療機関の長が設置することも、外部の機関に設置されたものを利用することもできます。重要なのは設置場所ではなく審議の独立性で、治験依頼者や自ら治験を実施する者と密接な関係を有する者、実施医療機関の長などは、審議および採決に参加できないと定められています。

また、委員会の構成に求められる条件は、次のとおりです。

  • 委員が5名以上であること
  • 医学・歯学・薬学その他の医療または臨床試験に関する専門的知識を有する者以外の委員が加えられていること
  • 実施医療機関と利害関係を有しない委員、および委員会の設置者と利害関係を有しない委員が加えられていること

このようにして、患者の人権が守られる計画になっているかを多角的な観点から審査することが可能となっているのです。

被験者への対応:インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントは、治験における倫理性の根幹をなすものです。被験者の自己決定権を保障するための重要なプロセスのひとつとして、GCPで定められています。

医師は参加する患者に対し、治験の目的や期待される効果、副作用のリスク、「いつでも参加を辞退できること」などを丁寧に説明しなければなりません。

そして、単に説明して同意を得るだけでなく、その同意が十分な理解に基づき、いかなる強制や不当な影響もない状態で、自発的になされたものであることが求められます。

そのため、口頭での承諾のみでは不十分です。必ず説明文書を交付し、同意文書への署名をもらうことが義務付けられています。

実施中の管理体制

治験が始まった後も、以下のように計画書どおりに進んでいるかを常に監視し続ける必要があります。

  • 治験のモニタリング
  • 副作用の報告

現場任せにせず、製薬会社(依頼者)が主体となってデータの品質と安全性を管理し続けなければなりません。

治験のモニタリング

GCPでは、製薬会社など治験依頼者が、治験の品質管理のためにモニタリングを実施することを義務付けています。

この実務を担うのが「モニター」または「臨床開発モニター(CRA:Clinical Research Associate)」と呼ばれる担当者です。彼らの主な役割は、治験がルールどおりに、かつ正確に行われているかを確認することです。

例えば、カルテ(原資料)と報告書を照らし合わせ、データの整合性をひとつひとつ確認します(SDV)。

SDV(Source Data Verification)とは、モニターが医療機関で保管されているカルテなどの原資料を直接閲覧し、治験で収集されたデータと照合して、その正確性や整合性を確認する作業のことです。

こうしたモニタリングのプロセスがあるからこそ、治験データの科学的な信頼性が担保されます。

副作用の報告

治験薬を投与している間に、予期せぬ副作用や健康被害が起きる可能性はゼロではありません。

薬機法第80条の2第6項およびGCP省令に基づき、治験中に発生した重篤な副作用等は、治験依頼者が知った日から7日以内または15日以内に、PMDAへ報告することが義務付けられています。期限は、症例の重篤度と、その事象が治験薬概要書から予測できるものかどうかによって決まります。

これは、いち早く情報を共有し、他の患者の安全を守るためのルールです。必要であれば治験を中止したり、計画を変更したりするなどの迅速な対応が求められます。

治験の進行プロセスとGCPの関わり

治験の進行プロセスとGCPの関わり

治験は、目的の異なる複数の段階を踏んで進みます。どの段階でもGCPは等しく適用されますが、対象となる被験者やリスクの性質が段階ごとに変わるため、重点を置くべき管理項目も変化します。

第Ⅰ相試験

少数の健康成人を対象に、主に安全性と薬物動態を確認する段階です。抗がん剤など、健康な人への投与が適さない場合は患者を対象とします。ヒトに初めて投与する段階であるため被験者保護の要求がもっとも高く、新有効成分の初回の治験計画届は30日調査の対象です。有害事象が生じた際に直ちに対応できる実施体制と、緊急時の連絡体制の整備が問われます。

第Ⅱ相試験

比較的少数の患者を対象に、有効性の探索と用法・用量の検討を行う段階です。ここでの結果が次の第Ⅲ相の設計を左右するため、評価項目の定義とデータの取り扱いをあらかじめ明確にしておく必要があります。この段階で規制当局と設計の考え方をすり合わせておくことが、後の手戻りを減らします。

第Ⅲ相試験

多数の患者を対象に、既存治療やプラセボと比較して有効性と安全性を検証する段階です。実施医療機関の数が増え、国際共同治験として実施されることも多いため、施設間で品質を揃えるモニタリング体制と文書管理が最大の課題になります。

承認申請

各相のデータをまとめて承認申請を行うと、PMDAによる審査に加えて、提出された資料が実際の記録に基づいて作成されているかを確認する適合性書面調査とGCP実地調査が実施されます。ここで重大な逸脱が見つかると、当該データが評価の対象から外れることもあります。治験中の記録管理が、最後の局面で効いてくる仕組みです。

治験実務で直面しやすいGCP運用の壁

治験実務で直面しやすいGCP運用の壁

GCPを遵守した治験実施は、想像以上にハードルの高い業務です。条文どおりの体制を整えようとすると、膨大な文書管理など実務の壁に直面します。

ここでは、多くの開発担当者が頭を悩ませる、現場レベルでの具体的な課題について解説します。

膨大な標準業務手順書(SOP)の作成と管理

GCPは、治験依頼者と実施医療機関の双方に、誰が実施しても同じ品質を保つための標準業務手順書(SOP:Standard Operating Procedures)の作成を求めています。

治験プロセスは複雑で関わる業務が非常に多いため、必然的に作成すべきSOPの数も多くなり、その策定には大きな労力が必要となります。

SOPは静的な文書ではなく、治験を取り巻く環境の変化に応じて継続的に見直しと更新が必要な「生きた文書」です。

GCPの改正、新しい技術の導入、組織内での業務プロセスの改善などを反映させるため、定期的なレビューと改訂を行う管理体制が不可欠です。

モニタリング・監査体制の確保

治験が適正に行われているかをチェックするモニタリングや監査には、高度な専門知識が不可欠です。

医学的・薬学的な視点でデータの整合性をひとつひとつ確認しなければならないからです。

また、監査担当者は開発部門から独立した立場である必要があり、社内だけで適切な人材を確保するのは容易ではありません。

形式だけのチェックでは後の適合性調査に耐えられないため、客観的で質の高い監査体制の構築が大きな課題となります。

ベンチャー・中小規模企業が抱える課題

豊富な人材を持つ大手製薬企業と異なり、ベンチャーや中小規模の企業ではGCPの専任担当者を置く余裕がないケースが少なくありません。

限られた少人数のスタッフが、開発業務と並行して複雑な規制対応を行うことになります。

その結果、日々の業務に追われて文書管理や教育訓練がおろそかになりやすく、意図せずGCP違反を犯してしまうリスクが高まります。

リソースが不足する中で、いかに厳格な品質保証体制を築くかが、治験成功の鍵を握っているのです。

GCP遵守・治験成功のために薬事コンサルができること

GCP遵守・治験成功のために薬事コンサルができること

自社リソースだけで厳格なGCPに対応し、治験を完遂するのは容易ではありません。

そこで頼りになるのが、規制対応のプロである薬事コンサルタントです。

コンプライアンス違反のリスクを最小限に抑え、開発プロジェクトを最短ルートで成功へと導くための大きな推進力となります。

体制構築のサポート

GCP運用の土台となるSOPの作成は、もっとも手間のかかる作業のひとつです。

コンサルタントは、企業の規模や実情に合わせた無駄のないSOP作成を支援し、無理なく運用できる体制づくりをリードします。

また、作成したルールを形骸化させないためには、関わるスタッフへの継続的な教育も欠かせません。

実務に即した教育訓練を代行・支援することで、組織全体にGCP遵守の意識を定着させ、足元から強い開発チームを構築します。

PMDA相談・適合性調査対応

PMDAとの対面助言は承認申請に向けて論点を整理する相談の場であり、適合性調査は承認審査の一環として、申請資料が実際の記録に基づいているかを確認する調査です。いずれも承認プロセスにおける重要な局面です。

当局との協議を円滑に進め、調査を無事にクリアするためには、資料の正確性の確認や論点の整理など、入念な事前準備が欠かせません。

コンサルタントは、模擬監査や資料レビューを通じて想定される論点を洗い出し、当日の円滑な対応を可能にします。

こうしてPMDAとの協議を円滑にし、手戻りを減らすことで、結果的に承認取得までの期間短縮につなげます。

リソース不足の解消とスピードアップ

医薬品開発、特に薬事や臨床開発といった高度に専門的な分野では、人材不足が業界全体の課題となっています。

特にリソースが限られる創薬ベンチャーなどでは、必要な専門家をすべて社内で賄うことは難しく、専門外の業務に時間を費やすことで、本来注力すべき研究開発などのコア業務が遅延するリスクがあります。

コンサルタントを活用するメリットは、こうした非コア業務や専門業務を外部に委託できることです。

経験豊富なプロがチームに加わることで、判断に迷う時間や手戻りがなくなり、プロジェクト全体の進行スピードが格段に上がります。

まとめ

GCPは被験者の保護とデータの信頼性を担保する基準であり、遵守できないデータは承認申請に利用できなくなってしまいます。

しかし、膨大なSOP管理や厳格な監査体制を自社リソースのみで完遂するのは、担当者にとって大きな負担です。

キューズコンサルティングでは、GCP体制の構築からPMDA対応まで、経験豊富なプロが現場に即して伴走支援します。

リソース不足の解消と確実な治験成功のために、まずは一度ご相談ください。